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◇海をゆく橋◇

 砂浜から海に向かって橋がのびている。
その先は水平線まで続いていているようで、かすんで先が見えない。

「この橋はどこに向かっているんだろう?」
「さぁ‥」

砂浜に立つ2人は橋のたもとから海を見つめる。

「でも橋だから、どこかにかかっているんだろう」
「おそらく」
「けれど渡る途中で、大波がくるかもしれない」
「確かに」
「もしかしたら途中で、橋が途切れるかもしれない」
「それもあるかもしれないな」

2人はお互いを見ることもなく、海に浮かぶ橋の先を眺める。
だがいくら見ても、はっきりとはしない。
穏やかな波が寄せては返し、たまに大きな波となり2人の足元を濡らす。
足をとられてよろけながらも、2人はその場を動かない。

雲が流れる。
波が後からあとからやって来ては、誘うように引いていく。
橋脚にも波がぶつかり音を立てる。
ゆだねるように波の音を聞き続ける。

ふと一人が橋に向かって足を踏み出した。

「行くのか?」
「あぁ」
「船でなくていいのか?」
「あぁ」
「天候が変わるかもしれないね」
「そうだね」
「途中、橋が途切れていたら?」
「その時はその時だ。船が通りかかるかもしれないし、向こう側に人がいるのを見るだけかもしれない。もしかしたら、いるかに助けてもらえるかもしれないぞ。折角の橋だ、行けるだけ行くよ」
「それも、そうだな」

一人が橋を渡り始める。少し歩いて一度だけ振り向くと、もう一人はひざの辺りまで海に浸かっていた。

「じゃあな」
「あぁ」

橋を渡る歩みはゆるやかで、周りの景色を楽しんでいるかのようだ。
けれど歩みを止めることなく渡っていく。

砂浜に残ったもう一人は、橋をゆく姿が小さくなりやがて消えてゆくまで、
ずっと見守っていた。

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